
僕の家の近所に小さなラーメン屋さんがあります。
カウンター3席だけの本当に小さな店。
いい人だけどおしゃべり下手な店主のおっちゃんが一人でやっています。
このラーメン屋、実に僕の味覚にストライク。
今までラーメンマンとして43年生きて来ましたが、その僕のベスト3に入るラーメン屋さんです。
遼君のマックのCMが流れていますが、あんな感じ。
思い出すと「喰いてぇぇぇぇ!」ってなる店です。
おっちゃんは人付き合いの不器用な人で(たぶん)、「あ、あんたさ、役者さんだよね、何かで見たよ、頑張ってね、うん・・・うん・・・」なんて不器用に言いながら、丁寧にラーメンを作ります。
作ってる姿は、こだわりが感じられて、その姿も味も、僕は大好きなのです。
ラーメン以外は何もない店なので、僕はいつも缶ビールを買って行きます。
するとおっちゃんは、いつも「ほい」と言いながら、コップを渡してくれます。
そのおっちゃんに、この間の深夜、店の近くのコンビニでばったり会いました。
「あ、あんたにさ、謝らなくっちゃいけないんだ」
「え?何、おっちゃん」
「俺さ、この間、おつり少なく出しちゃったんだ」
(ちなみにそのおつりって、100円以下です)
「そうなの、全然気づかなかったよ。いいよ、そんなの」
「い、いや、そんなの、気がすまねえから」
おっちゃんはおつりを僕の手に握らせます。
「ちょ、ちょっと待ってな」
おっちゃんは缶ビールを買います。
「おっちゃん、そんなのいいよ、本当」
「い、いや、そんなの、俺の気がすまねえから」
そう言っておっちゃんは缶ビールを僕に手渡して。
「いや、本当、すまねえ」
と言って、不器用に自転車をこいで帰って行った。
どんな仕事をしていても、大切な事は自分なりの「美学」があることだと僕は思っています。
役者になってから教わった、もっとも大切な事のひとつです。
僕がおっちゃんのラーメンが好きなのは、それが味にも姿勢にも感じられるからです。
おっちゃんのラーメンは勤勉で誠実な味がします。
おっちゃんの買ってくれたビールを飲みながら、また「喰いてぇぇぇぇ!」ってなってるカエルくんでした。
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