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僕のお師匠様の話

師匠が亡くなった。

 
青井陽治。
翻訳家であり、演出家である。
かつてはダンサーであり、劇団四季の役者でもあった。
 
彼の仕事に初めて触れたのは、「ベント」という芝居の札幌公演。当時21歳だと思う。
あまりの衝撃にすぐさま脚本を買い、巻末の訳者の文章を何度も読み返した。
いつかはこの人の仕事をしてみたいと思っていたら、その後上京して俳優座に入った時に青井さん演出の舞台を座内オーディションで募集するという。
色めき立った。
そして「ソフィストリー」で初めて演出を受ける。
同時にそれは僕の東京での正式なデビュー舞台となった。
 
それ以降、青井さんの作品には計7本、朗読劇も含めると8本の作品に出させて頂いた。
 
僕の演劇的な考え方や演技術(そんな偉そうに考えてないけど)は、ほぼ彼の教えによるものだ。
また僕が演出する時の手法や、大事にしているポイントも彼のやり方を踏襲している。
まさにデビューから芝居の「いろは」は青井さんに教わった。
なので、勝手に「師匠」と思っていた。
 
セリフのひとつひとつを全て解説し、読み方・話し方を丁寧に教えてくれたこともある。
夜中に1ロール使い切るくらいのダメ出しがFAXされたこともある。
いきなりゲネプロ(最終リハーサル)を止められたこともある。
「ます、君の芝居にみんなが迷惑してるよ、何とかして」
ひえぇ・・・である。
どこまでも優しく、どこまでも厳しい方だった。
そしてどこまでも演劇を愛している方だった。
どんな芝居をやっていても、青井さんが観に来ると知ったら背筋が伸びた。
そして、彼の言葉で僕が一番印象的だったのは、
「演劇の神様を裏切らない」。
 
「演劇の神様を裏切らなければ、誰を裏切ってもいいんだよ」と平然とおっしゃる人だった。
どこまでも芸術至上主義で、友人は多くいたけど、たぶん究極的には孤独な人だったと思う。
そして、芸術ってそういうものだということを知っている人だった。
もちろん、そんな潔さは僕にはない。
でも、稚拙なりに「演劇の神様を裏切らない」仕事だけは続けようと心に決めている。
きっとこれからも、彼ならこれを観てどう言うだろうと思いながら仕事をするんだと思う。
僕の中で、青井さんの眼は永遠だ。
 
青井さん、お疲れ様でした。
ごゆっくりお休みください、と言いたいところだけど、
きっと向こうで、もう先輩方と芝居の稽古を始めているでしょう。
楽しそうな青井さんの顔しか浮かばない。
 
また、芝居しましょうね。
Sophistry

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